不採用者から採用へ──「一度落ちた人」をもう一度活かす採用設計

「今回は不採用です」と伝えたはずの人が、数ヶ月後の募集で見ると「やっぱりこの人いいな」と思うことってありますよね。
でも、そこまで来ているのに“前に落としてるから声をかけづらい”“連絡先が見つからない”“誰が面接したか分からない”という理由で、結局また新規で候補者を集めてしまう。
これはものすごくもったいないです。
今回のテーマは**「不採用者 から 採用」**。
一度不採用になった人を、仕組みとして“次の採用につなげる”やり方をまとめます。
1. なぜ「不採用者から採用」ができると強いのか
理由はシンプルで、すでにお金をかけて会った人だからです。
- 媒体やエージェントで母集団をつくり
- 面接の日程を調整し
- 現場の人にも時間を出してもらって
- 応募者にも時間を使ってもらった
ここまで終わっているのに、その人を1回で捨ててしまえば、採用単価はずっと高いままです。
逆に言えば、「もう一度会う・もう一度採る」経路を作るだけで、採用コストは即下がるということです。
2. 「不採用」は「不適格」ではなく「今回は合わなかっただけ」
まず前提の考え方を揃えておきます。
“不採用”という言葉が強すぎて「この人はうちには合わない」と思いがちですが、実務の不採用理由の多くはこうです。
- 今回は即戦力が欲しかった
- 今回は年収レンジが合わなかった
- 今回は1枠しかなかった
- 今回は別部署の人を優先した
- 今回はフル出社マストだった
つまり**“会社そのものに合わない”わけじゃない**ことが多い。
ここを「今回は」で止めておければ、次の採用のときに“採れる不採用者”が一気に増えます。
3. 不採用者から採用に変えるための4ステップ
① 見送り理由を「次回の採用で使える言葉」で残す
「マッチせず」で終わらせないこと。
次の募集で見たときに判断できるよう、具体的に書きます。
- 年収が+50万円なら可
- 入社時期が3ヶ月後なら可
- インサイド→フィールドなら可
- 今回はリモート不可だっただけ
こうしておくと、新しい求人が立ったときに「前に落としたあの人、これなら行ける」がすぐに分かります。
② 不採用通知の中で“再応募歓迎”を宣言する
候補者側も「一度落ちた会社にもう一回応募して迷惑じゃないか?」と思っています。なので会社側から先に言います。
今回はご期待に沿えませんでしたが、選考時のご経験・お人柄ともに好印象でした。
今後近しいポジションを募集する際には、改めてご案内させてください。再チャレンジも歓迎しております。
こう書いておけば、次回こちらから連絡しても不自然になりません。
③ 新規募集をかける前に“不採用者リスト”に連絡する
ここが一番効きます。
- 新しい求人が立つ
- 不採用者の中で「評価高・条件ズレだけだった人」に一斉送信
- それでも足りなければ媒体・エージェントに出す
この順番にするだけで、**「新規で母集団を買う前に、過去の候補者を回す」**運用になります。
④ 他社に回した人も“呼び戻す”
前にやった「キャリアリレー」的に、他社に無償で紹介した人でも、あとから「うちでちょうどそのポジション空いたんですが、今どんな状況ですか?」と聞いてOKです。
“他社に回したら終わり”にしないで、**「他社に回しつつ自社でも見ておく」**で運用すると、採用チャンスが2倍になります。
4. どういうときに“不採用者から採用”が決まりやすいか
全部の不採用者が採用に変わるわけではありません。決まりやすいのはこの3パターンです。
- 条件だけズレていた人
年収・勤務地・リモート可否・入社時期など“外側の条件”だけで落とした人は、条件が変わった瞬間に採用に変わります。 - 事業フェーズが変わったとき
前回は「SaaSの新規開拓バチバチで!」だったのに、今回は「CS寄せで既存を丁寧に」であれば、前回“少しおっとり”だった人が急にハマることがあります。 - 評価が割れて落ちた人
面接官の中では「あり」「なし」が半々だった人。これは事業側の状況で普通に採れるようになります。こういう人は必ず残しておくべきです。
5. 実際に送るときのメール例
コピペで使えるように1本置いておきます。
件名:以前ご応募いただいたポジションに近い募集が再度出ました
〇〇様
以前は弊社の〇〇ポジションにご応募いただき、ありがとうございました。
当時は採用枠や条件の都合でご一緒できませんでしたが、今回あらためて近しいポジションの募集が決まり、ご連絡いたしました。【今回の募集】
・職種:〇〇
・勤務形態:リモート可(週1出社)
・想定年収:△△〜□□万円面接でお話ししたご経験が非常に印象に残っており、もしご状況が変わっていなければ、もう一度お話させていただけると嬉しいです。
ご興味があれば、こちらのフォームまたは本メールへのご返信で日程調整させてください。株式会社〇〇
採用担当 △△
ポイントは「あなたのことを覚えていますよ」を必ず入れること。これがあるだけで返信率が上がります。
6. KPIは“戻ってきた人の比率”で見る
「不採用者 から 採用」を仕組みにしたいなら、次の数字を見ておくと回しやすいです。
- 過去不採用者に送ったメールの開封率
- 再応募してくれた人の数
- その中で実際に採用できた人の数
- それにかかったコスト(ほぼゼロになるはず)
これを四半期で見て「媒体よりこっちの方が安いじゃん」となれば、社内でも一気に進めやすくなります。
7. まとめ:採用を“単発”から“回収型”にする
- 不採用者は“失敗した採用”ではなく“採りきらなかった採用リード”
- 落とした理由を次回用に残す → 募集前に声をかける、で「不採用者 から 採用」ができる
- 条件ズレ・タイミングズレの人は、次の募集で一気に採用に変わる
- キャリアリレーに乗せた人も、状況を聞き直せば戻ってくる
- これを仕組みにすると、採用単価が下がり、採用スピードが上がる
結局のところ、**「1回会った人をどこまで使い切るか」**が採用力になります。
次に求人が立ったら、媒体に出す前に「前に落としたけど良かった人」に声をかけてみてください。それが一番早くて、一番安くて、一番気持ちのいい採用になります。

