不採用者の「再チャレンジ」を仕組みにする

──一度落ちた人をもう一度採れる会社が、採用で強くなる理由
採用をやっていると、「この人、今回の枠では落としたけど、本当はまた会いたいんだよな…」という候補者って必ず出てきますよね。
でも現実には、
- 次の募集のときには連絡先が見つからない
- 担当者が変わっていて評価が伝わっていない
- 本人の気持ちが冷めてしまっている
こうした理由で「もう一度採りたかった人」を逃してしまうことが多いです。
そこで今回のテーマが**「不採用者 再チャレンジ」**。
一度不採用にした人が、ちゃんともう一度応募・再選考できるルートをつくると、採用コストもスピードも一気に良くなります。
1. なぜ「再チャレンジ」を設計すべきなのか
そもそも“1回の選考で落とした=その人が会社に合わない”とは限りません。落ちた理由の多くは実はこうです。
- 枠が少なかった(1名のみ、急ぎ採用だった)
- 今回は即戦力優先だった
- 年収・入社時期など条件が合わなかった
- 他の候補者の方がそのときは強かった
- 事業の優先度が一時的に変わってしまった
つまりこれは**「その人がダメだった」というより「タイミングがズレた」だけ**のケースがかなりあるということです。
にもかかわらず、仕組みとして「再チャレンジ」がないと、その人は次の採用機会にはいません。これは言い換えると、高いお金と時間をかけて集めた候補者を、1回で捨てている状態です。
2. “再チャレンジOKの会社”になると起きる良いこと
「不採用者 再チャレンジ」をちゃんと打ち出すと、こんなメリットが出てきます。
- 採用コストが下がる
2回目以降の応募は、媒体費やエージェントフィーがかからないことが多いです。過去に会った人をもう一度見るだけなので、コストは実質“メール1通”です。 - 採用スピードが上がる
過去に面接した人なら、会社説明やカルチャー説明が省けます。ときには1回面接で決められます。 - 候補者体験が良くなる
「今回はご縁がありませんでした」だけで終わらず、「次はぜひまた応募してください」と言われ、さらに本当に声をかけられたら、その会社の印象は強く残ります。口コミにもつながります。 - タレントプール・不採用者DBが“動き出す”
前回までやってきた「不採用者データベース」「タレントプール活用」と接続しやすくなり、“ためるだけで動かないリスト”ではなく“応募が戻ってくるリスト”に変わります。
3. 再チャレンジを実現するための3ステップ
「また来てくださいね」と言うだけだと、9割は戻ってきません。戻ってこられるようにしておくことが大事です。最低限、次の3つをやっておきましょう。
(1) 落とした理由を“次に使える言葉”で残す
「なんとなく違う」「他の人に決まった」で終わらせず、次に見たときに判断しやすいように書きます。
- 今回はマネージャー想定だったが、チームメンバーとしては良い
- 入社希望時期が遅く、今回は急募だった
- 営業→CSへのスライドなら合いそう
- リモート希望だったのでNGだった(次にフルリモート枠が出たら声をかける)
こうしておけば、次の募集で「この人なら行ける」人を5分で抽出できます。
(2) “再チャレンジ歓迎”のメッセージを不採用通知に入れる
これは簡単ですが効きます。
今回のポジションとはタイミングが合いませんでしたが、選考全体としては大変好印象でした。
今後、同種または近しいポジションで募集を行う際には、こちらからご連絡させていただければと存じます。
つきましては、よろしければ引き続き情報をお送りしてもよいかご返信いただけますと幸いです。
と書いておけば、「また応募してもいいんだ」と認識してもらえます。
これがないと、候補者側は「一度落ちたしな…」と遠慮してしまいます。
(3) 募集開始時に“過去不採用者に先行で送る”
ここが実務で一番効きます。
社内で「新規で◯◯職2名募集します」となったら、媒体に出す前に
- 過去1年で最終面接まで来た人
- 評価が高かった人
- 条件だけ合わなかった人
に優先でメールをします。
以前ご応募いただきありがとうございました。
前回ご応募いただいたポジションに近い職種の募集が再度出ましたので、もしご興味があればぜひもう一度お話させてください。
と送るだけで、一定数は戻ってきます。
ここまでやって初めて「不採用者 再チャレンジ」が“仕組み”になります。
4. 再チャレンジを“何ヶ月後からOK”にするか問題
よくある質問が「どれくらい期間を空けてから再応募OKにすべき?」です。これは会社によりますが、目安を置くならこうです。
- スキルが追いつけば採れそうな職種(エンジニア、デザイナーなど)
→ 3〜6ヶ月後に再チャレンジOK - ポテンシャル採用・営業・CSなど、マッチ度とタイミングの要素が大きい職種
→ 1〜3ヶ月後でもOK - 同じポジションで同じ要件のときに落とした人
→ 次の募集時に再選考(期間は問わない)
要は「落とした理由」が解消されるまでの時間を目安にすればよい、ということです。
“再チャレンジは半年後で統一”とガチガチに決めるより、見送り理由に合わせてタグを付けておき、募集時にそのタグで呼び戻す方が実務では回りやすいです。
5. 再チャレンジで注意すべき3つのこと
① 同じ選考官のフィードバックを共有する
前回「×」をつけた人が、別ルートで来たら「え、なんでまた?」となりがちです。
ATSやシートに前回の評価コメントを必ず添付しておくと、今回の面接官が前回との差分だけを見られます。
② 前回より選考を“軽くしすぎない”
「一度会っているから」と言って選考を省略しすぎると、今回もミスマッチだったときに説明しづらくなります。
前回が書類・一次までなら、今回は一次・最終、くらいのイメージで“半歩ショートカット”にとどめるとバランスがよいです。
③ 候補者の現在地をちゃんと聞く
3ヶ月〜1年で候補者の状況はガラッと変わります。副業を始めた、リモートしかできなくなった、年収を上げたいフェーズになった──など。
再チャレンジ時には、前回の条件を前提にしないでヒアリングをし直すことが大事です。
6. 「キャリアリレー」との相性がめちゃくちゃ良い
あなたが考えている「不採用になった人を他社に無償で紹介し合う」仕組み(キャリアリレー)は、この“再チャレンジ”とセットにするとさらに強くなります。
- まず自社で再チャレンジ候補としてプールする
- それでも今のところは枠がない人だけをパートナー企業に回す
- パートナー企業でも同じことをするので、逆にあなたの会社への再チャレンジ候補が増える
こうなると、**“再チャレンジ候補が外に出たのに、むしろ戻ってくる”**という循環ができます。これをやると、媒体にお金をかける回数が一気に減ります。
7. まとめ:不採用は「終わり」ではなく「保留」にしておく
- 不採用の多くは“能力不足”ではなく“タイミング不一致”
- だからこそ「不採用者 再チャレンジ」を最初から案内しておくと戻ってきやすい
- 見送り理由を残す → 次回募集のときに先に声をかける、で仕組み化できる
- 再チャレンジは採用コストを下げ、採用スピードを上げ、候補者体験も良くする
- キャリアリレーと組み合わせると、外に出した人材が別ルートで返ってくる
採用がうまい会社は、**「会った人を使い切る」ことがうまい会社です。
これからは「落とすか採るか」だけでなく、「今回は保留。次で再チャレンジ」**という第3の選択肢をメインに置いておくと、採用はもっと楽になります。

