不採用者を“資産”に変える。キャリアリレーが実現する新しい採用のかたち

はじめに:不採用者は「失敗」ではない
採用活動において、多くの企業が直面している課題の一つが「不採用者の扱い」です。
せっかく時間をかけて面接し、適性を見極めても、最終的に採用に至らなかった候補者の情報は、多くの場合そのまま眠ってしまいます。
しかし実際には、不採用者の中にも「他の企業では即戦力になり得る人材」が数多く存在します。
この「不採用者」を有効活用し、自社にとっても他社にとっても価値のある“資産”に変える——。
そんな新しい採用のかたちを実現するのが、**「キャリアリレー」**です。
不採用者を資産化するという発想
従来の採用活動は、「採用できた人材」だけに価値があると考えられてきました。
一方で、不採用者にかかったコストは「無駄な出費」と見なされがちです。
しかしこの考え方こそが、採用効率の低下を招いている要因でもあります。
企業が採用活動に投じるコスト(求人広告、エージェント手数料、面接時間、管理システム費など)は決して小さくありません。
それにもかかわらず、不採用となった候補者の情報は再利用されず、採用コストは回収できないままです。
キャリアリレーでは、この「不採用者情報」を“共有可能な資産”として捉え、
他社との連携を通じて採用コストを回収しながら、新しい採用の流れを生み出します。
キャリアリレーとは?仕組みの概要
キャリアリレーは、企業間で不採用者の情報を「バトンのように引き継ぐ」仕組みです。
たとえば、A社の面接を受けた求職者が不採用となった場合、その候補者の情報がB社・C社に紹介され、
別の企業での活躍の可能性が広がります。
この際、紹介料や仲介費用は一切発生しません。
なぜならキャリアリレーは「不採用者を互いに紹介し合う」仕組みだからです。
企業同士が協力関係を築くことで、採用の効率化と人材の最適配置を同時に実現できます。
キャリアリレーの主な特徴
- 紹介フィーがかからない
通常の人材紹介では、採用が決まるたびに30〜35%の紹介料が発生します。
しかしキャリアリレーでは、企業間での“リレー”形式の紹介のため、コストゼロで運用可能です。 - 不採用者データを有効活用できる
採用管理システム(ATS)などに蓄積された不採用者データを再活用することで、
「一度の採用活動が複数の成果を生む」構造を作り出します。 - 企業ブランドの向上
不採用者に対しても丁寧に次のキャリアを支援する姿勢は、
候補者体験(Candidate Experience)を向上させ、企業イメージの改善にもつながります。
採用コスト回収という新しい視点
企業が1名を採用するためにかける平均コストは、業界や職種にもよりますが約50〜100万円と言われています。
この中には求人広告費だけでなく、面接担当者の人件費や選考ツールの費用も含まれます。
キャリアリレーを導入すれば、不採用者を他社へ紹介することで、
自社で発生した採用コストを「間接的に回収」することができます。
他社が紹介を受けて採用を決めれば、その候補者情報の価値が実質的に“再生産”されるのです。
さらに、企業間で協力関係を築くことで、
「採用に強い企業」「人材ネットワークを持つ企業」としてのブランド力も強化されます。
不採用者の活用がもたらす3つのメリット
① 採用コストの削減・再利用
通常の採用活動では、「不採用になった時点でコストは終了」します。
キャリアリレーでは、その候補者情報を他社にリレーすることで、**採用コストを“再利用”**できます。
無駄になっていたデータが、新たな価値を生む資産へと変わります。
② 人材プールの拡大
自社だけでは出会えなかった人材にもアクセスできるようになります。
キャリアリレーを活用することで、同じような採用基準を持つ企業同士が人材を共有し、
結果として採用母集団が拡大します。
③ 候補者満足度の向上
不採用になった候補者に対し、「次の企業を紹介します」と伝えることができれば、
応募者の印象は大きく変わります。
「この会社は誠実だった」「別のチャンスをくれた」と感じてもらえることで、
将来的な再応募や顧客化につながる可能性もあります。
キャリアリレーがもたらす社会的インパクト
不採用者の活用は、単なる採用効率化にとどまりません。
日本全体の労働力不足、採用ミスマッチ、離職率の高さといった社会課題の解決にも寄与します。
特に中小企業では、限られた採用予算の中で「良い人材に出会えない」という悩みが多くあります。
一方で、大企業の選考を通過できなかった優秀な人材が、多く市場に存在しています。
キャリアリレーは、こうした**「埋もれた人材」と「人手不足の企業」をマッチング**する仕組みです。
不採用者という“未活用資産”を循環させることで、
日本全体の人材流動性を高め、生産性向上にもつながることが期待されています。
導入企業の声(例)
「面接で良い印象だったけれど、今回のポジションには合わなかった。
でも他の企業に紹介できることで、結果的にその方が採用されたと聞き、うれしかったです。」
— IT企業採用担当(東京都)
「以前は不採用者データをただ溜めていただけ。
今はキャリアリレーを通じて他社との関係ができ、採用の質が上がりました。」
— 製造業人事部長(愛知県)
このように、キャリアリレーは単なるシステムではなく、
企業同士が協力し合う新しい採用文化を生み出しています。
まとめ:不採用者を「終わり」ではなく「次の可能性」に
これからの時代、採用活動は「獲得競争」から「共有と循環」へと進化していきます。
不採用者を単なる“落選者”として扱うのではなく、
「次の企業で輝く可能性を持つ人材」として活かすことが、企業の持続的成長につながります。
キャリアリレーは、その第一歩を支える仕組みです。
採用コストを回収しながら、社会全体の雇用の質を高める。
それこそが、これからの時代にふさわしい**“人材資産化”の在り方**ではないでしょうか。

